業務効率化と”マーケティング ”意識の醸成を実現常に先進事例を作りつづけ、挑戦を重ねたい
神奈川県の県央二次医療圏の高度急性期医療を支える病院のひとつである海老名総合病院は、2019年夏から『foro CRM』の活用を開始しました。前方連携に関するデータを収集・分析するツールとして、そして病院の職員に”マーケティング”の概念を理解してもらうために『foro CRM』を有効活用してきたといいます。『foro CRM』を通して、同じ医療法人グループである座間総合病院との連携もスタートしました。同院の地域連携課で前方連携の推進に取り組む後藤純平課長代理に、導入の経緯やその効果などを伺いました。
データ管理とマーケティングへの意識が、大きな課題として浮き彫りに
海老名総合病院の概要を教えてください。
後藤:神奈川県海老名市を軸に、近隣の座間市や綾瀬市などを含めた約30万人が住むエリアで、高度急性期医療を提供してまいりました。病床数は479床で、2017年に救命救急センターが開設されてからは年間約8500台の救急車を受け入れています。
近隣に同規模の総合病院が少ないこともあり、周辺にお住いの方々には真っ先に頼っていただいていると感じています。「地域密着高度急性期病院」をビジョンとして期待に応えられる病院であるべく、日々、医療体制の整備に勤しんでいます。
エリアの特性としては、高齢化率が24 %程度に留まっている点が一つ挙げられます。この数年、海老名駅周辺エリアの再開発が進んでおり、マンションなどが次々と建てられて、ファミリー層が流入してきた結果、2025年まで人口が伸びていくと予想されています。おのずと当院も老若男女問わず、幅広い世代にご利用していただいています。
近隣の座間総合病院とは密に連携しているそうですね。
後藤:同じ社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスが経営する座間総合病院は、2016年に開設された新しい病院です。高度急性期に特化する海老名総合病院に対し、座間総合病院は一般急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟から成るケアミックス病院です。両院の診療圏はほぼ同じですので、地域住民の方やご紹介いただいた患者さんが、状態に応じた適切な医療をタイムリーに受けられるよう、連携を密にしています。
地域医療連携上の課題はどのようなものがございましたか?
後藤:2011年頃から前方連携には本格的に取り組んでおり、前方連携で言えば、地域の医療機関への訪問は継続して行っていた記録があります。ただ、あくまでも表敬訪問のような形であり、顔をつなぐ程度といった感覚だったようです。
過去の訪問記録はデータとして残っているものの、個人がメモ代わりにExcelに打ち込んでいるという程度。どういう意図で訪問したのかや次に何をすべきなのかが、不明瞭なのが難点でした。
病院スタッフの意識にも課題もありました。私は製薬会社のMR出身ですから余計にそう感じるのかもしれませんが、院内の異動によって営業職ともいうべき今の立場になっただけで、前方連携活動を通して紹介を増やす重要性をあまり実感していないのが伝わってきました。前方連携の仕組みを整える前に、活動する意義を理解してもらうのが重要だと感じていました。
クリニックから紹介を受ける意義を、改めて考えていく
『foro CRM』導入の経緯を教えてください。
後藤:私は先程お話したとおり、製薬会社から、当院の母体である社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスに、2019年5月に転職しています。その年の夏、当院の病院長がメダップさんの前方連携にかかわるシステムの話を聞きました。営業系システムだけに、MR出身の私ならば話が分かるだろうと声がかかり、まずはメダップさんとの打ち合わせに臨むことになりました。
一通り『foro CRM』の話を聞いて心に浮かんだのは、素直に「いい取り組みだ」という感想です。前の会社では様々なデータを分析したり見える化できるBIツールなどを用いており、欲しいデータなども瞬時に表示させることができていました。
しかし、病院に転職してみるとデータ分析をする環境があまり整っておらず、先ほど話したように個人の手作りのExcelファイルだらけで、グラフを作るのも大変な手間がかかりました。
これを改善するのにシステム環境から整備していたら、この先何年かかるのかと頭を抱えていたんです。しかし、メダップさんに依頼をすれば、少なくとも前方連携の課題に関しては、短期間で解消できるとの手応えを得ました。
ご利用開始が2019年夏。最初はどんな取り組みからスタートしましたか?
後藤:初期段階で注力したのは、病院スタッフの前方連携活動への意識の醸成です。私が海老名総合病院の前方連携を担当することになったとき、営業職上がりの社員がやってくるということで、みんながビクビクしているように思えました。そこでメダップさんの力を借りながら、スタッフたちがより前方連携活動に前向きに取り組んでいけるよう、様々な要素の改善を進めていきました。
訪問をすることに対して気が引けるといったネガティブなイメージを払しょくするべく、きちんとストーリー立てて話を進める手法なども伝えていきました。無論、データ共有や情報の蓄積といったところも、メダップさんと連携して一つひとつ構築していきました。
利用しているうちに新しい取り組みが始まったそうですね。
後藤:主に院内で近隣医療機関からのご紹介を受け付けるのは「カスタマーコンタクト係」というチームです。このチームが実際に訪問に伺う担当者とリアルタイムで情報共有することで、全員で連携先医療機関の対応をしていく習慣を定着させていきました。『foro CRM』に電話応対の履歴を入力すれば、自然と連携できるというのは心強いところでした。
座間総合病院との連携も強化しています。新しい病院だけに前方連携に関してもまだ整備されておらず、海老名と座間の双方のスタッフが、同じクリニックに同時期に訪問してもその情報が共有されていないなどの事態も発生していました。
そこで、2020年4月からは座間総合病院でも『foro CRM』を導入。以降はクリニックごとの紹介数や訪問の頻度・履歴などを『foro CRM』上でリアルタイムに共有しつつ、週1回ミーティングを行うことで、2つの病院が一体となったマーケティングを実践できています。
月間30時間分の業務効率化、コロナ禍でも紹介数の向上に貢献
導入後はどのような効果がありましたか?
後藤:『foro CRM』に情報をまとめて入れておけば、他の担当者らと簡単に情報共有できますし、資料作成に必要なデータも簡単に表示されます。おかげで業務の大幅な効率化につながっており、月間30時間分の業務時間が削減されました。院内の運営会議などでも『foro CRM』のダッシュボード画面をそのまま見せながら報告することが可能となり、組織全体にデータに基づいた集患活動の考え方が徐々に浸透してきたと思います。病院長も日頃から「データに基づいて考えよう」と仰られており、そういった意識がより醸成出来てきたと感じています。
紹介数に関しては、20年度はCOVID-19の影響があり、全体としては伸び悩みましたが、注力診療科においては19年度実績を上回るご紹介をいただけるなど、一定の紹介数が確保できているのは、『foro CRM』のおかげだと感じています。
スタッフの方の意識面ではどんな変化がありましたか?
後藤:訪問活動に対して躊躇していたスタッフたちも、メダップさんのコミュニケーションを交えた『外報』という訪問前後の状況に合わせたシミュレーションを経て、臆せずに訪問に飛び出していけるようになっています。
病院のスタッフがマーケティングの観点を理解する上で、メダップさんのレスポンスの早いアドバイスや教育面を含めた対応にはいつも助けられてばかりです。
過去の活動記録を記録して共有できるからこそ、訪問することで得られた気付きが次回訪問時のトーク展開の土台となっており、大きなストーリーに沿った集患活動ができているとの手応えも得ています。
院内の先生方の反応はいかがでしょうか?
後藤:『foro CRM』の分析の結果、地域連携課の職員が単独で訪問するよりも、医師が同行すれば紹介件数がより増加することがデータとして明らかになりました。特に、診療科の部長クラスの医師が同行したときはいっそう件数が伸びており、しかも1回よりも2回、2回よりも3回訪れれば効果が出るという事実が浮き彫りになっています。
私どもとしても、経験的に「医師の同行に効果があるのではないか」と、ぼんやりと考えてはいました。今回、定量的なデータで立証できたことで先生に同行をお願いがしやすくなりましたね。
医師はサイエンスの世界に生きているだけに、数字で示されると「やってみよう」と言ってくれるのがありがたいところです。ただ、院内に『foro CRM』の成果を発表する機会がまだまだ少なく、主に経営陣に向けた報告に留まっているので、今後、医局会などでも発表できる場を用意していく考えです。
今後はどのように『foro CRM』を活用されるお考えですか?
後藤:20年度はCOVID-19対応もあって難しい面がありましたが、これまでにメダップさんと共に前方連携の土台をしっかりと築き上げることが出来たと感じています。利用3年目に突入する今後は、より結果にこだわって成果を出していくことを目標としています。そのために重要になってくるのは、人材の育成にほかなりません。以前と比べれば格段に良くなったとはいえ、スタッフのスキルは成長途中ですから、メダップさんの力を借りつつ、一人ひとりが自立して、自走できる組織へ進化させたいと思います。
座間総合病院との連携もさらに強化して、エリアとして一体となった地域医療連携を推進していきたいとも考えています。両院が位置するエリアは、近隣に病院も少なく、これまでは自然と患者さんが集まる恵まれた環境にありました。しかしながら、変化が激しいこの時代、今の座に胡坐をかいていると取り残されることになりかねません。だからこそ、時代にキャッチアップしていくのではなく、一気に最先端に行くという感覚で、先進的な事例を作り続けたいと思っています。